沖縄で短編映画? 仲間とチームビルディング? 一見何のことか分からない… 異色の? モニターツアー『沖縄3日間!仲間と作る短編動画 ~南の島でチームビルディング~』(企画:糸満市観光協会・主催:株式会社 富士ツーリスト)が、2016年12月15日(木)〜17日(土)、沖縄本島南部・糸満市を中心に開催されました。

その目的は、観光でもアクティビティでもありません。ズバリ、タイトル通りの「チームビルディング」。1人では決して成し得ない「映像製作」の作業を通して、2泊3日の限られた時間内に、グループ一丸となって(3分程度のムービー作品1本を作り上げると言う)ミッションを遂行します。

参加者を強力にサポートするのは、全国トップクラスのファシリテーターを筆頭に、大御所映画監督に&経験豊富な玄人カメラマン。いずれもプロ中のプロ、凄腕の皆さんです。
参加者は、5人×2グループの計10人。1つは、東京は八王子の映像専門学校から、引率の先生1人と生徒からなる「チームぱっちー」(写真一番下から2つ目)。いわゆる経験者グループです。一方、宮崎は西都市から、農家を営むご夫婦と、その甥っ子の高校生などを中心とした「チームPOP-m(ポップン)」(写真一番下)。前者とは対照的に、全員未経験の初心者です。いずれも、一般募集で選ばれた皆さんです。
2泊3日のおおまかな流れは、初日がオリエンテーション、ロケハンに研修。2日目が撮影本番に、編集作業を経て、作品完成、そして試写会。3日目が振り返りです。ツアーの拠点は、参加者のステイも兼ねた糸満市の「サザンビーチホテル&リゾート」。3Fの会議室にて、各種作業が行われました。
初日。もちろん最初はガチガチの全参加者…。自己紹介やアイスブレイクの後、日本ファシテーション協会取締役会の平井 雅さんを舵取り役とした、オリエンテーション開始。企画の主旨や目的をしっかり頭に入れます。

そして、『青い魚』『群青 愛が沈んだ海の色』を代表作に持つ、当ツアーの重鎮・映画監督の中川 陽介さんが登壇。現場での心得や撮影のコツなど簡単なレクチャーを受け、ロケハンに出発です。ぱっちーは、中川さん。ポップンは、カメラマンの中嶋 環さんが、それぞれチュートリアルとして、付き添いました。
舞台となったのは、観光地とは一線を隠す、知られざる糸満市4つの名所。本島南岸を見渡す見事な抜けが自慢の『大度浜海岸(おおどはまかいがん)』(トップ写真)。石垣に囲まれた赤瓦古民家屋など沖縄の原風景が残る『米須集落(こめすしゅうらく)』。


湧き水の情景と巨大なガジュマルが神秘的な『嘉手志川(かでしがー)』。そして、沖縄最後とも言われる“相対売り”が残る『糸満公設市場』。翌日の撮影本番に向けて、各グループ、4箇所それぞれで気になったポイントを、スマホで撮影したりメモを取ったりで、映像イメージを膨らませます。


2時間程のロケハンで、ホテルに戻ってからは、いよいよチームビルディング研修(その1)。ロケハンで得た様々な情報を元に、作品の大まかなテーマや構成、そして監督、カメラマンと助手など、それぞれの役割分担などを決め込んでいきます。夕食後も、続けて研修(その2)が行われ、初日から相当内容の濃い一日となりました。

2日目は、いよいよ撮影本番当日。8時にホテルを出発し、まずは糸満公設市場へ。前夜、プラニングしたいくつかのシーンを、各グループ、2カメラずつで撮り下ろしていきます。肉を売るおばぁ、三線を奏でるにぃにぃ、朝の光が眩しい目の前の糸満漁港など、画になるシチュエーションが目白押し!

続いて向かったのは、嘉手志川。この時、天候が少し怪しくなりましたが、黙々と撮影を進めます。あるコンビは川上から葉を流してイメージカットを。別のコンビはガジュマルの間を吹き抜ける音を主役に収録しました。

お次は、大きく山側と海側に分かれる米須集落。目にとまるのは、古民家に咲き誇る赤や黄色や紫…。この時期でも原色色とりどり、鮮やか咲き誇る南国の花々をしっかりキャッチ。屋根や門に鎮座するシーサーや生まれて初めて見る石敢當。そして、集落内各地で飼われる犬や山羊も友情出演(笑)。集落内の公民館にて昼食&休憩を挟んで、午後の部がスタート。各チーム、撮れ高もばっちりでした。

ロケーションのラストは、大度浜海岸。この時期の南岸ならではの、寄せては返す穏やかな波の表情や、ダイナミックな隆起石灰岩、そして数キロ先まで伸びる本島南岸の遠景など、沖縄南部特有の静かな、それでいて厳かなシーンをみっちり抑えました。

楽しい撮影も終了。しかし、実はここからが本番の、編集作業…。中川さんや中嶋さんの的確な助言を受けつつ、各チーム2つのカメラで撮り下ろした10秒程度からなる数多の映像を、たっぷり4時間かけて、慣れないMacと映像ソフトを使って、編んでいきました。もちろん、合わせる音楽の選定やタイトル決めなど、作業は多岐に渡ります。そして、タイムリミットである19時…。両チームとも、見事に完成させました!

夕食後はいよいよ、ドキドキの上映会。ぱっちーのタイトルは[風の音]。さすが経験者、安定感抜群! 花や犬、魚など生物達をモチーフに、叙情的なシーンを満遍なくちりばめ、玄人向けの、骨のある作品を見事に仕上げました!
片や、ポップンの作品[ミーニシの吹く風]は、そのタイトル通り、北風(ミーニシ)の吹く冬の情景を、穏やかな画でつなぎ合わせました。未経験者とは思わせない高い完成度に心を打たれました…。
いずれのチームにも、ただただアッパレ。鑑賞後は参加者&運営スタッフ全員、鳴り止むことのない拍手が…。その場にいた人全てを称え合う中、中川監督に至っては、目にはうっすら光るものも…(感)。最終的に22:00終了と、朝から14時間、初日を遥かに上回る密度の高い、メインの中日がこうして幕を閉じました。

最終日は、午前中すべてを使って研修(その3)。ちょっとしたゲームなどのメソッドを取り入れた他、映像資料を視聴しつつ、課題の達成ができたかなどを、振り返り。うまくいったこと・いかなかったこと、各々の気付き、そして次回へのヴィジョンなどを、付箋や模造紙を使って、各チームで共有。そして、参加者全員が一言ずつ感想を述べました。「チーム」はもちろん、「絆」「リーダー」や、「成長」「将来」、「満足感」「達成感」。加えて、沖縄の「自然」「海」、「人々」「文化」、「魅力」などの言葉が紡がれました。

こうして終了した3日間。当初、誰もが「なんで私ここにるの?」「オレ本当にできるかな…」と言わんばかりの、しどろもどろ&不安に満ちた表情でした。それが、48時間後には180度ガラリとチェンジ。ある人は、さながら大度浜海岸の水面のようなキラキラとした目に…。ある人は、まるで嘉手志川の大ガジュマルを吹き抜けた風のごとき爽やかな佇まいに…。参加者全員、一回り大きくなったかに見えたのは、きっと気のせいではないでしょう。

チームワーク、メンバーシップ&リーダーシップの形成はもちろん、撮影や編集の技術的な知識やスキルまで身に付く濃密な経験値。加えて、リゾートの観光地とは異なる、知られざる沖縄の人・文化・自然に出逢える素朴な喜び。一般的な沖縄ツアーの、2倍にも3倍に膨らむ感動の体験は、まさにオンリーワンと言えるでしょう。ありそうでなかった斬新なモニターツアー、次回開催の際は、ぜひ皆さん、気の置けない仲間たちとのご参加をお待ちしています!

■感動体験プログラムについて、詳しい情報は公式サイトをご覧ください。
沖縄CLIPフォトライター 小川 研(Qey Word)
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