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<当コラムについて>
糸満(いとまん)のサバニ大工・大城清さんと高良和昭さんが、2017年7月2日開催予定の「第18回サバニ帆漕レース」に出艇されるご自分たちのチームのサバニを制作されていく様子を連載でお届けしております。詳しくは前回までのコラムをご覧ください。
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2017年.緑が伸びやかな4月、サバニの制作作業がはじまりました。
んにゃぁ~、んにゃぁぁぁあ~あ~あ~。
サバニ工房に足を踏み入れると、ロボットのネコが鳴いているような音がしています。サバニ大工の大城清さんが、サバニの側面となる板「ハラケーギ」の上に電気カンナを滑らせていました。ハラケーギの成形は、厚みを整え、墨を入れ、彫り込むことがおもな作業。訪れたときは、厚みを整えられているところでした。「樹のいい香りがするでしょう」。大城さんの言葉通り、工房は杉の香りで満たされていました。小さな工房でちょっとした森林浴です。が、うっかり風下にいると、細かい木屑でゴホゴホッとむせてしまいました。
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作業の合間、ポツリポツリと大城さんは様々なことを語られます。例えば、与那国島(よなぐにじま)のサバニは反りが深く、12メートルの白波にも向かっていけるほど荒波向きだとか、むかしは「石(こく)」単位だった材積計算がいまでは「立米(りゅうべい)」単位になっているだとか。専門的な内容で私には少々難しいものもあれば、地域性や時代の移り変わりを知ることができるものまで、その内容は多岐にわたります。
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「昔の海人(うみんちゅ/漁師)はトビウオ漁から戻ってきて港に入ると、舟を軽くするためにこっそり網を海に投げていたみたいです。そして岸を目指して、我先にと一目散に競い合っていたんですよ。もちろん投げた網はあとで取りに戻りますけど。そこまでして負けたくないって気持ちがあったんですね」と大城さん。商売道具の大切な網を投げ出してまで勝負するあたりは、海人の気性とユーモアをよく表すエピソードです。幅広い知識を有する大城さんのお話を聞けるだけでも、工房に来ることが楽しくなります。
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「墨入れをする前に、私の頭のなかにはサバニのイメージがすでに出来上がっています」と大城さん。墨入れは、サバニの高さ、幅、厚みなどを決定する作業なので、サバニの強度に影響するそう。「サバニ、サバニと言うけれど、サバニにも種類がいろいろとあって、用途によって異なります。私は島々を渡っていくような遠洋のサバニを基準にしています」という大城さんが、今回レースに向けて作られているサバニは、これまでレースで乗っていたサバニよりも幅が広く、外洋の波に強いサバニ。なんとも頼もしいサバニになりそうです。
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作業の合間に、大城さんが少し照れ笑いをするように、「今回は時間がありませんし、自分たちのサバニなので、本来は彫り出す工程をいくつかショートカットしてますよ。本当はサバニ大工の腕の見せどころなんですけどね」とおっしゃいました。
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多忙を極めた大城さんたち、予定より数ヶ月遅れでサバニ制作がはじまったことから、船員が座るザシカ(座板)を置くための台「サシカザン」など、彫り出してつくる数カ所の部分を省略して、その部分は後付にされるそう。それは、「なんとしてもレースまでにサバニを完成させたい。完成させるのだ」という大城さんたちの強い意志の表れのように思えました。(つづく)
沖縄CLIPフォトライター 安積美加
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