
野菜やお惣菜を売るおばぁにコーヒーショップ、おすし屋さん。人気観光スポット、牧志公設市場の裏通りにあたる(公設市場の)西口付近は、かくれた名店がひしめきあうエリア。その一角に、泡盛専門店、「琉夏(りゅうか)」があります。
大学時代に沖縄を訪れ、泡盛の魅力に惚れこんだという店主の小野あきおさん。卒業してすぐに移住し、泡盛の勉強を重ねて2004年に琉夏をオープンさせました。

店のモットーは、いたってシンプル。
『安くておいしい泡盛を伝えたい』
1.5坪の小さな店に並ぶ泡盛はざっと350銘柄。さらに県内全ての酒造所を巡り、自分の舌で確かめ、「安くておいしい」と選びに選び抜いたおすすめは30銘柄ほど。店頭のいっとう目立つ場所にずらりと置かれています。

「県外でもよく知られる大手メーカーの泡盛ではなく、小さな蔵元の隠れた銘酒を届けたいんですよ」と、小野さん。
だから、店頭に並ぶのは、県外にあまり流通していないものばかり。そして「幻の泡盛」といわれる高価な泡盛は置かない主義。適正価格で、ちゃんとおいしい1本を買える店として知られています。
お客さんは観光客をはじめ、珍しい銘柄がほしいといって、県外で居酒屋を経営する泡盛通のオーナーまで訪れるそう。

もちろん泡盛初心者でも大丈夫。小野さんは「普段どんなお酒を飲んでいるか」「飲みやすいお酒が好きか、クセのあるものが好きなのか」など質問を重ねながら試飲をすすめ、その人に合うおすすめを絶妙に選んでくれます。
このやりとりが、すこぶる楽しい!

「これはね……」と説明しながら次々と差し出してくる泡盛を試飲すると、どれも口当たりや広がり、喉ごしが違います。まろやかなもの、パンチのあるもの、同じ泡盛でもこれほどまで差があるのかと、奥深さに驚くことたびたび。

貯蔵のしかたにも並々ならぬこだわりがあります。というのも、熱烈な阪神ファンの小野さんは、貯蔵庫で眠らせている泡盛に、阪神の応援歌「六甲おろし」を聞かせて熟成を進めているとか!
実際に音楽を聞かせるなど、たとえわずかでも振動を与えることで、熟成が進むというから驚きです。
さらにその阪神熱は、球団承認のワンカップ泡盛まで作ってしまったほど。上の泡盛は、2015年2月に行われた阪神の沖縄キャンプで売られたものだそう。
虎酒と書いて「こしゅ」と読む。中には一緒にワンカップを作った蔵元が、大切に熟成させていた、とっておきの古酒(くーす)が入っています。

「これから泡盛を飲んでみたい方に、初めてでもうまいと言ってもらえる、いい酒を届けたい。自分の店が泡盛入門の入口になったらと思っています」
聞けば聞くほど、泡盛の奥深い世界を惜しみなく教えてくれる小野さん。うんちくを聞きながらこちらも質問を重ねて会話を楽しむ。これこそ旅の醍醐味!
泡盛を愛してやまない店主は、今日もその魅力を伝え続けています。
琉夏(りゅうか)
住所/沖縄県那覇市松尾2‐10‐1 第一牧志公設市場西口
電話/098‐862‐6743
時間/12時~21時(不定)
定休日/年始(そのほか仕入れで休みになる場合も)
沖縄CLIPフォトライター 小野暁子
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