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沖縄にまた一つ誕生したマイクロブルワリー。昔ながらの面影を残す市場の街で作られる浮島ビール(那覇市)

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国内外からの観光客と地元の買い物客がひしめきあう那覇市の中心部。国際通りと市場本通り、そして浮島通りが描く三角形のほぼ真んなか辺りに、「浮島ブルーイング」という小さなクラフトビールの工房が2017年末、オープンした。今も昔も変わらない那覇のランドマーク、第一牧志公設市場から数十メートル。台北の路地裏を彷彿とさせる一角にある古い建物の空き部屋を、仲間たちと文字通り一からリノベーションして誕生したできたてのビール工房だ。




定番的な銘柄は現在のところ4種類。ベルギー酵母が醸すバナナのようなフルーティな香りが印象的なヴァイツェン。小麦をたくさん使っているので泡のキメが細かくて、飲みやすいビールだ。植民地時代のイギリスからインドへ輸出されていたことで知られるIPAは、ホップを大量に使った、大人の苦味が持ち味。どっしりした印象が特徴的だ。ビールが得意でない人にもおすすめしたいのがゴールデンエール。スッキリした飲み口で、温度が上がると蜂蜜のような香りが立ち上ってくる。そして、複雑で上品な味わいを楽しめるベルジャンIPA。ヴァイツェン酵母を使ったIPAでアルコール度数が8%と高めながらも、メロンなどのフルーツやフローラルなフレーバーが絡み合っていて、じっくりと楽しめるビールだ。






浮島ブルーイングで使っているビールの材料は、ベースモルトと呼ばれる大麦麦芽、赤みがかった色と甘い香りのもとになるカラメルモルト、泡持ちをよくする小麦など。銘柄によって種類や配合を変えて、1ロットあたり100数十リットルのビールが作られる。






今回の取材では製造工程の一部を見学させもらった。朝8時にお邪魔すると糖化作業が始まろうとしていた。麦芽を鍋に投入して90分ほど、一定の温度を保ちながら、ハーリーで使うエークのような櫂(かい)でタイミングよく攪拌する。すべては麦芽に含まれる糖化酵素が働きやすい状態を作るため。酵素によって働きやすい温度帯が異なるので、できあがるビールの性格に適した温度帯に調節する。




無事に糖化を終えた麦芽汁は別の鍋に移されて煮沸という工程に入る。麦汁に含まれる余分なたんぱく質などを取り除くとともに、ホップを投入し苦みや香りをバランスよく抽出していく大切な工程だ。

「こうやって仕込みをしながら『今度はもう少し苦味を効かせたいね』という具合になったりすることもあるんです。そういう時は、次回の仕込みでホップの配合や煮込みの時間、ベースモルトとカラメルモルトなどの量をいじってみるわけです」。浮島ブルーイングのビールづくりの基本スタンスは、常に「やってみながら」。やってみる、トライしてみる。そして、プロセスと結果からフィードバックを受け取って、これから(未来)を決めていく。徹底した現場主義と実践主義。「現場のリアル」から得られる情報や感覚を大切にして、街のビールが醸される。

麦汁にホップ香が馴染んだところで冷却の工程へ。なるべく短時間で冷ましてから、いよいよアルコール発酵のステップに入る。酵母を入れて待つこと1週間。糖分でいっぱいの麦汁が若ビールに生まれ変わる。さらに待つこと2~4週間。熟成されたおいしいビールが産声をあげる。




 浮島ブルーイングを営んでいるのは、代表の由利充翆(ゆり・みつあき)さん、醸造を担当する宮里幸多(みやざと・こうた)さん、クラフトマンの飯塚慎太郎さんだ。クラフトビールが大好きなビール三銃士。たとえば宮里さんの場合、好きのレベルは、ビールの本場チェコを新婚旅行の行き先に選び、ハネムーンでビールを飲み歩いたというほどのもの。もともとビールは好きだったそうだが、微生物と発酵の神秘を描いた漫画『もやしもん』を読んで変化が起き、ベルギービールに初めて触れた時、クラフトビールの魅力を知ったという。

「いろんな味が楽しめるのが魅力ですね」。浮島ブルーイングの立ち上げに合わせて栃木から移住してきた飯塚さんはそう語る。日本で初めて地ビールメーカーが誕生した地域として知られる北海道の北見市に住んでいた時に、飯塚さんはクラフトビールに一目惚れした。




「いつも飲んでたビールとはいくつも違うところがあって驚きました。銘柄ごとの個性、味の違いが『研究対象』としてとっても面白いなあって。職人的な目線でも興味をそそられたんです」。クラフトビールとの出会いをそう振り返る由利さんは、宮里さんと同じく地域づくりの仕事に長らく関わってきたし、今もそれは変わらない。「ビールは間口が広いポピュラーなお酒だし、作り手の個性を表現しやすい飲みものじゃないですか、那覇の浮島というエリアをさらに面白くできるコンテンツとしてもクラフトビールは魅力的だったんです」。空き店舗が目立つ商店街の活性化に長らく関わってきた由利さんは、現在も公設市場の周辺地域を盛り上げて行く仕事を続けている。地域を構成する主体のひとつに自らなることで、商店主や商店街に対してよりよいアドバイスと実現性の高い提案をできると考えたのだ。




おいしさは地域を変える。7月13日には浮島ブルーイングで醸造されたビールを、新鮮なうちに味わえる素敵なお店がオープンした。その名も「浮島ブルーイング タップルーム」。アルゼンチン出身のウチナーンチュ3世、セルヒヨさんらが作る沖縄と世界の港町をテーマにした料理もビールと一緒に味わうことができる。那覇の中心で世界に向かって産声をあげた小さいけれど、たくましい浮島ビール。那覇にお越しの際はぜひ味わってみてほしい。


APOLLO BREW
住所/沖縄県那覇市牧志3-3-1 水上店舗第二街区3階
Webサイト/http://www.apollobrew.okinawa/tap-room.html


沖縄CLIPフォトライター 福田展也


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