うつわ好きにはたまらない彩り豊かなやちむんの世界
沖縄を旅したことがある方ならば一度は耳にしたことがある言葉「やちむん」。主に沖縄県本島で作られる「焼き物(陶器)」のことを指します。県内にはたくさんの陶房が点在しており県外のファンも多く、やちむんを目当てに沖縄へ訪れる人もいるほど。
那覇市壺屋(つぼや)や読谷村(よみたんそん)などで開催される「やちむん市」は県内外からのたくさんの人で毎年賑わいます。
やちむんの魅力は、色とりどり華やかに描かれた染付(そめつけ)柄の豊かな色彩がダイニングを明るく演出し、盛り付けられた料理も普段よりちょっぴりおいしそうにみえるのが多くの人に愛される理由です。また、マカイと呼ばれるご飯碗をはじめ小皿やどんぶり・鉢など様々な器が豊富にあり、ふだんの暮らしに取り入れやすいのも親しまれている所以です。
2020年から2021年にかけては新型コロナウィルスの影響で多くのやちむんイベントの開催が中止や延期にになっています。そこで、今回は沖縄CLIPマルシェで買える壺屋焼のやちむんの魅力を壺屋陶器事業協同組合の島袋常秀理事長にお話を伺ってみました。
壺屋焼について
壺屋陶器事業協同組合理事長島袋常秀さん
1682年に知花窯(現・沖縄市)・宝口窯(現・那覇市)・涌田窯(現・那覇市)という3つの窯を琉球王府が壺屋焼に統合し、以来300年以上沖縄の伝統工芸として息づいている壺屋焼のやちむん。主に5つの特徴があります。
1.「じょうやち(上焼き)」と「あらやち(荒焼き)」
2. 沖縄ならではの陶土
3. 釉薬
4. 成形
5. 施釉・加飾
1.「じょうやち(上焼き)」と「あらやち(荒焼き)」
壺屋焼は大きく分けて「じょうやち(上焼き)」と「あらやち(荒焼き)」の二つの製法があります。「じょうやち」は白化粧された器に「唐草」や「菊」「魚紋」「蝦」などが描かれ生活雑器として使われている、やちむん好きの多くの方に馴染みの深い器たちのこと。「あらやち」は、釉薬を使わず土そのものの色合いが出たもので酒甕、水甕など大きいものを中心に作られています。「じょうやち」は、中部以北の土を「あらやち」は南部地方の土を使っています。
2.沖縄ならではの陶土
良質な陶土が採れることも沖縄でやちむん作りが盛んな理由の一つです。壺屋陶器事業協同組合では、研究を重ねながら壺屋焼に適した土を作っています。この土が、壺屋焼ならではの力強さや温かみを生み出しているのです。
3.釉薬
壺屋焼で使われる釉薬は、壺屋焼独特のもので白釉(はくゆう)、黒釉(こくゆう)、緑釉(りょくゆう)、飴釉(あめゆう)、呉須(ごす・青藍色)、乳濁釉(にゅうだくゆう)など特徴的で柔らかな色合いが魅力です。
4.成形
器を成形する方法として、ろくろ、押し型、手びねりなどが主な技法です。ろくろは電動のものから足で蹴りながら回す「蹴ろくろ」など、使う職人によってさまざま。
5.施釉・加飾
器の装飾は、筆で絵を描く染付、型を彫って違う素材の土をはめ込む象嵌(ぞうがん)、花の型を押し付けて模様をつける印花(いんか)などの技法を用いて個性的な器たちが作られています。
染付で描かれるモチーフは、長寿・繁栄を表す「唐草」「菊唐草」「魚紋」「蝦」など。縁起の良い柄が描かれているので贈り物やお土産にも喜ばれる工芸品といえます。
壺屋焼を作る工房は南は南城市、北はやんばるの大宜味村(おおぎみそん)まで点在しています。読谷村と大宜味村には「登り窯」と呼ばれる昔ながらの窯で作る工房があります。年に4回と窯出しが限られているので、希少性も高く人気を呼んでいます。
生活の柄を彩るやちむんたち
壺屋焼は、「紅型」「首里織」「琉球漆器」などとともに450年の歴史を持つ琉球王国時代から盛んだった工芸の一つですが、海外貿易の献上品として主に作られていた他の伝統工芸とは異なり、庶民のための生活用品として作られてきました。
戦後もいち早く陶工が那覇に集まり、壺屋から再び壺屋焼の窯に火が灯り、今の那覇市の発展へと繋がっていきました。「『食べる』『飲む』といった人々の日々の暮らしに生活の柄を添えていく。それが壺屋焼の役目であり、新しい道が開けるのでは」と島袋理事長は語ってくれました。
沖縄CLIPマルシェで買える壺屋焼
(注)こちらの画像はイメージです
沖縄CLIPでは、今回ご紹介した壺屋焼をご用意しています。魚紋が凛々しい酒器「カラカラ」や、凛々しい姿で見守ってくれる「シーサー」、赤絵が可愛い「タラフ(蓋つき小物入れ)」など、あなたの生活の柄に添えてみてはいかがでしょう。
沖縄CLIPフォトライター monobox(河野哲昌、こずえ)
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