
たとえば、静かな住宅街にある小さな教会とか、ずっと前に建てられた小学校の図書館とか、ちっちゃい頃から泊まりに行ってたおばあちゃんちとか。そういうところで感じるほっとする感じだとか、時が止まったような静けさだとか、わけもなく恋しくなることはありませんか?

天井が高くて、窓は木枠、ガラスは下半分が磨りガラス。白く塗られた壁に窓から差し込んだ柔らかい光が反射してほどよい明るさに満たされている。心地よい風がレースのカーテンを時々揺らす。宮古島で人気の「モジャのパン屋」の隣にできたatelier nicoge(アトリエ和毛)。通りを行く人が「ここはなんだろう」とウインドーを覗き込むことがしばしばだという不思議なこの空間は、アトリエ、レンタルギャラリー、工芸セレクトショップからなる複合スペース。沖縄本島にある県立芸大で油絵を専攻していた村田亜喜代(むらた・あきよ)さんが、2015年3月にオープンした居心地のよい場所です。



「宮古島でぜひ出会ってほしい」と思う作家さんがつくったものなど、村田さんの視点で集められた商品が古い本や海岸で拾ってきた流木や手入れされた植物とともに存在感を放ちながらも調和のなかに並べられています。それらは「関心がある人しか行かないような美術館とかギャラリーに飾られている作品ではなくて、日々の生活で使われる暮らしのアート」。グラスだったり、木の器だったり、ピアスとかオブジェだったり。ベタで直接的な「沖縄」ではなく、すくい取られた沖縄のエッセンスが上手に再構成されたものたち。

おすすめは、村田さん本人がほぼ毎日手描きしている手ぬぐいです。宮古島で過ごす日々のなかで見かけた花とか、「ああいいなー」って感じた光の印象などを、イメージから色と形に置き換えて、サラサラ・コツコツ描くのだそうです。

柔らかくてふんわり、時にはスーッと流れるように。世界にひとつしかない宮古島のエッセンスがゆるーく描かれた手ぬぐいは、ちょっとした贈りものにもオススメです。

「天気とかその日の雰囲気で描くタッチが変わるよね」。あるとき、親しい人にそう言われてハッとしたそうですが、「毎日の変化に影響されることを楽しみながら描いている自分がいる」と村田さんははにかみながら語っていました。そして、描き終わった手ぬぐいには、「満月花」とか「浮き花」とか、心の中にふわっと思い浮かんだ名前をつけているのだとか。



誰もがいろんなシチュエーションで使えるし、かさばらなくて軽いので、おみやげにはぴったりの手ぬぐいのほか、琉球ガラスらしくないシンプルでシュッとした琉球ガラスや、沖縄産の蜂蜜など、カッコよくて気の利いたギフトにぴったりな商品たちがセレクトされています。

「ひと息ついたり、ぼんやりと考えごとをするのを楽しみたくなったし、落ち着いて絵を描きたくなったから」。沖縄本島から宮古島に移り住んだときの気持ちを「苦手な言葉」に置き換えてくれた村田さん。そんな彼女がいるからこそ、ここには和毛(にこげ)のように柔らかくて、軽くて、そして、ちょっとキラキラした、沖縄っぽい時間が流れているのでしょう。

しばらくたつと、想像の翼がしらずしらずに広がって、素敵な物語を紡がれそうなこの場所は、宮古島の青い海と燃えるような赤い夕日を堪能したあとに、訪れていただきたいスポットです。
住所/沖縄県宮古島市平良東仲宗根20
電話/090-9787-1232
営業時間/13:00~日暮れ
定休日/日曜・月曜
沖縄CLIPフォトライター 福田展也
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