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フォトライターズダイアリー 054 Sandy編

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今帰仁村(なきじんそん)の舗装されていない山道を登ると見えて来る、手作り感溢れる素敵なお家。天気のいい日は海も見渡せる高台の友人の家に、街疲れをすると癒されにいく。

 
自分が移住してしばらくして、友人の長屋夫婦がまだ産まれたばかりの赤ん坊を連れて沖縄に移住してくる事になった。ただでさえ移住者にとって沖縄といえば仕事が見つかるか不安なのに、いきなり北部なんて大丈夫なのかな?


 
そんな心配をよそに、彼らは着々と地域に溶けこんで自分たちの生活スタイルをつくっていった。今は友人が作ったセルフビルドの家に、産まれたばかりの女の子と長男、夫婦の4人家族で住んでいる。奥さんのちーちゃんは洋裁をしながら家事育児をし、旦那のまさとは「No Name Iron Works」名義で、店舗内装やインテリア製作など、鉄家具のオーダーメイドを中心に活動し生計をたてている。


 
それだけを聞くと、「最初から手に職があったから、そんな生活できるんでしょう?」と思うかもしれないけれど、実際のところまさとは昔務めていた会社で重機の溶接をやってはいたが、それで生きて行けるとは思っていなかったそうだ。工具をこっちで揃えてからは、家具に関してはほとんど独学。
 
「都市部に住んで会社で仕事をするか田舎に住んで家族中心でやっていくのか悩んだけど、やっぱり決め手になったのは子どもがのびのびと育てられる環境がいいなって。あと田舎暮らしをしたいけど、なかなか勇気がなくて出来ない自分と同世代の人たちに、意外となんとかなるっていうのを見せたかったし、後に続ける様な現地の窓口になりたかった」
 
とはいえ、最初は決して楽な生活ではなくて、フルタイムでアルバイトをしても微々たるお金にしかならなかったし、人との繋がりをつくるのにそれなりに時間もかかった。一度繋がると、沖縄はあっという間に輪が広がる。輪が広がると「自分はこんなことをやっています、こんな事がやりたい」というのを伝えているうちに自然と人のつてで仕事がまわってきたりする。そして地元のお祭りや行事、地域の仕事をしているうちに集落の人もあたたかく受け入れてくれ、子どもも地域みんなで育ててくれる、そんな素晴らしい環境にどんどん魅了されていった。
「以前は草刈り機も触れ無かったけど、地元のおじいに教わりながら今ではチェーンソーで台風で倒れた木も切り落とせる様になったんだんだよ。仕事以外の地元の繋がりがしっかりあって、その中で生きて行く術みたいなものを身につけていくのが面白いんだ」

 
月に3回ほど打ち合わせで中南部に出向く他は、家の工場で作業。ほとんどの時間を家族と一緒に過ごすことができる。裏庭には手づくりのブランコがあり、コンポストといって生ゴミを微生物や土壌動物の力を借りて堆肥に変えている。

 
「このカボチャもそうしていたら、勝手に生えて来たんだよ。」
この辺の地域では「半農半X」といって、自給自足をするかたわら、自分の得意分野でお金を少しだけ稼ぐ人も多い。庭でBBQやたき火をすることもある。といってもやっぱり北部ともなると、台風後の停電が3日間続くなんていうことも。
「そうなったらもうその状況を楽しむしかないから、朝からピザ生地を練ったりしているよ 笑」

 
近くのスーパーまでは車で10分とそれほど不便は感じない地域だが、それでも街の様な刺激を感じる場所は少なく、そういった場所に行くには車でもかなりの時間がかかるので、暮らしを楽しむ方に興味がシフトしていった。「近くにモールや美味しいお惣菜屋さんがあったら行っちゃうし買っちゃうけど、いまはわざわざそこに行くのも面倒だし、それなら自分でつくっちゃおうって。こっちに来てから出来上がった物ではなくて、素材を買う様になった。もちろんそれをせざるを得ないっていう経済的な面もあるけれど、買うウキウキよりも、作るウキウキの方が今は強い」とちーちゃんは言う。味噌に梅干し、シロップ、天然酵母のパン、家庭菜園…。趣味でやっていた洋服づくりも沖縄に来てから本格的に始めた。長屋家は家具も家も食事も服も、手づくりのもので溢れている。

 
「時間のつかいかたが変わったんだと思う。割きたい時間の対象が変わったっていうのかな。でも移住して一番良かったな、と思った瞬間は子どもが裸足で、真っ裸で、綺麗な海に飛び込んで行った時!」
都会の暮らしを捨て、田舎で自分のやりたいことだけで一から生計をたてていくのは、かなり覚悟がいることのように思う。けれども彼らが手にした自然に溢れたゆったりとした暮らしは、都会で生活していると忘れている何かを沢山思い出させてくれるな、と朝、ちーちゃんの焼いた天然酵母のシナモンロールをほお張りながら感じていた。

 
 
No Name Iron Works
r.c.m@docomo.ne.jp
 
沖縄CLIPフォトライター Sandy

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