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畑人(ハルサー)の想いを届ける八百屋「野菜屋 元」

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沖縄を旅する間、カフェやイベントで、木箱につやつや輝く野菜が並ぶ光景にバッタリ出くわすかもしれない。どこかの国のマルシェのようで、思わず野菜を手にとりたくなるその店の名は、「野菜屋 元(はじめ)」。どれも好きな分だけ量り売りで買える、野菜の移動販売のお店だ。

 
沖縄に移住してはじめて農業にたずさわったというオーナーの松村 元(まつむらげん)さん。勤めはじめた農園で、毎日土にふれ、種まきから収穫までを経験しながら、育て方ひとつで野菜の味に違いが出ることを実感した。
 
というのも、松村さんが働いていたのは農薬・化学肥料不使用で有機栽培する農園。それによって手間は増え、生き物と向き合う大変さを感じつつも、愛情をもって接することで野菜の成長が変化することや、収穫の深い喜び、何よりおいしいことなど、手をかけて野菜を育てることに魅了されたという。
 
だからこそ、農薬や化学肥料を使わずに野菜を作り続ける畑人(ハルサー)がたくさんいることも知った(畑人=沖縄の言葉で農家の人、畑で働く人)。けれど同時に、いい野菜を作っても販路を見出せない畑人がたくさんいる状況も見えたという。

 
「問題を見つけると乗り越えたくなるタイプなんです」
 
ここで松村さんは、野菜を作る側ではなく、有機野菜の流通経路をつくり、畑人の想いを伝えられる仕事ができたらと思い始める。なかでも大切にしたいのは、野菜を育てる作り手の想いを伝えることだった。

 
松村さんが扱う野菜は、「農薬・化学肥料不使用」で「有機栽培」または「無肥料栽培」のもの。特に無肥料栽培は、文字通り肥料を使わないので野菜本来の力をぐっと引き出す栽培法。地中に深く根をはり、生命力が強くて栄養価も高く、体がおいしいと感じる野菜なのだという。
 
「土づくりからはじまり、野菜の持っている力を信じて育てる栽培法は、育てるというより補助して見守る感じ。まるで子育てのようです」
 
そう笑う松村さんの言葉に、はっとした。ふたりの子をもつ私も、子育てでは子どもたちの個性や生きる力をのばしてあげたいと思う。時に水をやったり日影をつくりサポートしながらも、信じているのは個々の力。持っているものを存分に発揮したら、それぞれが生き生き輝くと知っているから……
 
だとしたら、野菜も本来の持つ力を生かして成長すれば、エネルギーが満ちてきっとおいしいはず。さらに農薬や肥料を制限する分、じっくり手をかけて育てられているから、愛情もたっぷり注がれている。食べるならそんな野菜がいいと素直に思った。

 
素朴だけれど香りが強くてピリッとした辛みを感じたり、甘みがあったり。本来の持ち味が生きた野菜のおいしさは、イベントなどで試食を出したときの子どもたちを見ると、よくわかるそう。
 
「普段、にんじんやトマトが苦手だという子どもがパクパク食べてくれて、そばにいるお母さんが驚いているんです。本能のままに生きる子どもたちにはわかるんだろうなって思います」

 
この野菜を多くの人に届けたい、独立して売りたいとますます想いを深めたとき、松村さんはひとつの販路を見出していく。それは、沖縄に野菜がすごく少なくなる夏、淡路島の友人が育てた有機栽培の玉ねぎを取り寄せて、ファーマーズマーケットに売ったことがきっかけだった。
 
「とにかくよく売れたんです。沖縄で玉ねぎが収穫できない夏、安心して食べられる玉ねぎがこんなにも求められているんだと知りました」
 
沖縄と本島では気候が違うので、同じ野菜でも収穫期が違う。県産野菜が豊富になるのは冬の初めから夏の初めまで。逆に沖縄産の野菜の種類が減るのが夏。これは本島とほぼ逆転する。だったら、冬は沖縄から本島に野菜を送り、夏は本島から沖縄に野菜を送ってもらえばいい。もちろん、農薬・化学肥料不使用で有機栽培、無肥料栽培のものを。

 
そう決意して農園を辞めたのち、「野菜屋 元」を本格始動させた松村さんは、農家を一軒ずつ訪ねながら、取り扱う野菜を増やしていった。同時に、関西出身の強みをいかし、関西圏での取引先も増やしていった。今では県外も含めて、必要としている時期に必要なところへ送り出す松村さんならではの流通経路を築いている。

 
そんな松村さんの行動が口コミで広がって、県内でも「野菜屋 元」の野菜を扱う飲食店が増えてきた。宜野湾市にある「CAFE UNIZON(カフェユニゾン)」もそのひとつ。ここは数種類の野菜を買うこともでき、カフェメニューにも野菜を取り入れている。

 
そして月に一度、「ベジタブルマーケット」を開催し、このときは多種類の野菜を店頭で買えるのだ。
 
 
マーケットには、野菜を使ったパンも並ぶ(パン屋Uzuki)。
 
 
さらにカフェでは「野菜屋 元」の野菜をたっぷり使った、この日限定のスペシャルメニューも登場。今回はサンドイッチで、ガーリックバターを塗ったカリカリの細長いパンに、色とりどりのマリネ野菜がサンドされ、ひと口食べたらシャキシャキとした野菜の食感と味のハーモニーに感激! セロリをかくし味にしたポテトのポタージュも絶品だった。
 
夏はサラダがメインだったり、冬は体を温めるシチューだったりと、季節の野菜に合わせてメニューが変わる人気カフェとのコラボレーション。そのおいしさは太鼓判だ。
 
 
イベントに積極的に出店したり、野菜のネット販売もはじめるなど、活動の幅を広げている松村さん。物腰がやわらかく、一見ひょうひょうとしているようで、おいしい野菜を届けたい情熱はひと一倍。応援したいと思わせる何かを秘める人。
 
「これからもずっと、農家さんと消費者の橋渡し役でありたいと思っています。おいしくて安全な野菜ができるまでの道のりや、愛情をかけて野菜を作る農家さんの想いをたんたんと伝えていきたい」
 
その言葉通り、野菜を「作る人」と「食べる人」をつなぐ輪は、松村さんを通してどんどん大きくなっていくのだろう。
 
 
野菜屋 元(はじめ)
 
 
沖縄CLIPフォトライター 小野暁子
 
 
 
 
 
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