沖縄本島北部、東村。“メイン”街道・国道58号が南北に伸びる西海岸に対して、“裏側”とさえ言われる東海岸には、観光・商業・飲食・宿泊など、目立った施設はほぼありません。言わば、本島最後の“未開の地”、と言っても大袈裟ではないでしょう。
そんな、知られざる東村に、正真正銘・本物の“隠れ家”を見つけました。『ペンション＆カフェテラス たちがあ』は、その名の通り、2Fは宿泊スペース＆1Fがカフェのオーベルジュです。余計な装飾を排したシンプルな木造建屋は、自然豊かな周囲に溶けこんでいます。一見何の変哲もない物件ですが、実は驚くべき事実がいくつも潜んでいます。
まず何より、そのクオリティの高さに驚きます。特に、2Fの宿泊スペースに一歩入ると、内装・調度品など「この僻地に、このレベル？」と思わず口に出してしまいそう…。ラグジュアリー感漂う客室は、およそ93㎡。広々とした高級な1ルームに、ロフト式の寝室付きという作りです。
続いて驚くのは、オープンテラスが自慢な1Fのカフェと、そこにあるテーブルやチェアは、なんと全てオーナーの手作り！ モダンなセンスと高い技術力に、脱帽の一言です。ただ、残念ながら現在これらの多くは、目利きの客に買い取られ、見る事が出来ません…。さらに、およそ2,800坪からなる敷地の開拓や工房の建物も、オーナーが30年近くかけてコツコツとほぼ一人で造り上げて来た事にも驚かされます。
もちろん、一日一組限定の宿なので、カフェ閉店の19時以降は、この広大な土地を文字通り独り占めです。また、敷地内には、ちょっとおもしろいネタもいくつか。手作りのカヌーや、人懐っこくない（笑）ワンちゃんが2匹。また、断崖絶壁にこしらえられた空中テラスも人気です。標高およそ65mの高台から太平洋を見渡しながら、のんびりランチをたしなみましょう。ちなみに、宿泊者は、BBQ（機材貸出・食材込み/1名2,500円税込）も可能です。
そして…。最も驚愕すべきは、敷地内に天然の小川が流れており、さらに、なんと滝まで（しかも2つも！）あります。（もちろん）手作りの階段＆遊歩道を120m程歩ければ、程なく涼やかなせせらぎが…。（大雨の後などを除いて）普段はとても穏やかな水場には、魚影もちらほら。天気の良い日には、川辺でばっちり遊べます。また、流れに沿って少し歩けば、海岸に到着。もちろんほぼプライベート状態なのは言うまでもありません。
人工物からロケーションまで、びっくりポイント満載の『たちがあ』。父親が東村出身のオーナー・大宜見さんは、かつては那覇市の隣・浦添市在住でしたが、週末に自然豊かなこの地で過ごすうち、いつしかその素晴らしさに魅入られ、移り住みました。そして、一人でも多くの人に、その魅力を知って欲しいと、四半世紀以上、人生の半分以上を費やし、2011年、ついにペンション＆カフェのオープンにこぎつけました。
ところで、『たちがあ』という屋号は、２つの滝の名前である「タチガア」に由来しています。そして、そこには二説あるそうです。一つは、（古来、沖縄には「滝」という言葉はなく）“立つ川（タツカワ）”を表す滝の呼称としての「タチガア」です。もう一つは、「タチ」には“２つ”という意味があり、「一の滝」と「二の滝」、２つの川から「タチガア」と呼ばれるようになったとのことです。
やんばるを愛してやまない大宜見さんは、ハードのみならずソフト面にもぬかりはありません。色濃い自然が残る周辺のツアー（約3h/1名1,500円税込）は、空きがあれば、飛び込みもOK。また、近海の釣りツアーもスタンバイ（詳細は問い合わせ）。また、宿泊客限定のサービスとして（先の写真のものとは異なりますが）、レンタルカヌー（1泊2日/3,000円税込）や、7~9月にはパイン収穫体験も展開しています（パイン2個付き/1グループ1,500円税込）。
ところで、滝の傍らにあるログハウス。気になりますね。こちらはリフォーム予定で、いずれはゲストハウスとしてオープンしたいと、大宜見さんは、意気込んでいました。
ハードにもソフトにも、魅力がギュッと詰まった、いわば大宜見さんの壮大なライフワーク。話しを聞くほどに、想いと情熱がヒシヒシと伝わってきました。まだまだ発展途上の、リアルな夢の形…。この先、どのように進化広ていくのか、楽しみは尽きません。
ペンション＆カフェテラス たちがあ
住所／沖縄県国頭郡東村宮城５１９－１
電話／0980-43-2186
料金／（1室4名/1泊朝食付き）25,000円税込～ ※定員8名（5名以上の場合1名に付き＋5,000円税込）
チェックイン・チェックアウト／14:00・10:00
営業時間（カフェ）／11:00～19:00
定休日（カフェ）／水曜
沖縄CLIPフォトライター 小川 研（Qey Word）
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