ミヤコブルーとして知られる青い海が人気の宮古島(みやこじま)。自然の豊かさと並んで伝統文化が色濃く残り、イチャリバチョーデー(「出会えば兄弟」を意味するシマクトゥバ)の気質が県内でも強いこの島に日本最南端の蕎麦畑がある。南の島の太陽を浴び、ミネラルたっぷりの潮風に吹かれて育った宮古の蕎麦を使って手打ちした日本蕎麦を食べさせてくれる店があると聞いて訪ねてみた。
注文してしばらくすると、ほのかに緑がかった艶のある蕎麦がざるに盛られて運ばれてきた。さっそく、青ネギとわさびはそのままにしてめんつゆだけで、ずずっとすすった。蕎麦独特の豊かな香りと、しぐれのようにすっと消えいるような繊細な甘み。麺のコシはしっかりしていて、噛んだあと歯にぬかることもない。
続いては天ぷらの盛り合わせ。メインの海老2尾に宮古島で採れた旬の野菜が盛り付けられている。野菜の種類は季節によって変わってくるがこの日は5種類。ゴーヤー、ウリズン豆、フーチバー(よもぎ)、オクラ、そしてかぼちゃがサクサクの衣をまとって現れた。
蕎麦屋の楽しみといえば、冷の日本酒をちびりちびりとやりながら本を読んだり、とりとめもない物思いを楽しむこと。だし巻きや板わさ、蕎麦味噌をつつきながらのひと時もたまらない。
そばといえば沖縄そば。日本蕎麦を食べる文化がなかった宮古島に『食菜かま田』がオープンしたのは2010年。宮古島で生まれ育った鎌田広子(かまだ・ひろこ)さんが一人で始めたこの店を息子の鎌田賢(かまだ・けん)さんが手打ち蕎麦の店として再スタートさせたのが5年前。
蕎麦に対する鎌田さんの真摯な姿勢が口コミで広がり、地元のファンを増やしてきた。朝の6時から毎日手打ちされる蕎麦からは「よりおいしい蕎麦を」という真剣さが確かに伝わってきた。
宮古島に移住するまでは蕎麦はもちろん、食の仕事に関わったことがなかったという賢さん。子ども時代から、夏休みのたびに母親の故郷、宮古島には毎年のように遊びに来ていたそうだ。サラリーマンをしていた2008年、宮古の蕎麦畑を訪ねたときに転機が訪れた。その畑は宮古の高校で教師をしている従兄弟が土壌改良と水質改善を目的に実験的に始めたものだという。
収穫の手伝いをしているうちに楽しさを感じ始め、宮古島で蕎麦農家をやってみたいと思うまでになったのだとか。栽培して玄蕎麦を出荷するだけでは生計を立てるは難しいだろう、どうせやるなら、玄蕎麦から蕎麦粉、蕎麦粉から麺にして直接お客さんに味わってもらいたいと決めてからは、関西から関東へと、話題の蕎麦屋を食べ歩き、独学で蕎麦打ちを学び始めた。
「かま田さんは味がどんどん進化しているんですよ。オープンしたばかりの時は一所懸命に打った蕎麦という感じでしたが、いまではがんばりがしっかり形になった蕎麦を行くたびに味わっています」。
そういう風に食菜かま田を勧めてくれたのは、毎週のように食べに来ているという常連客。
「蕎麦を育てて蕎麦を打ってという生活に体はボロボロだけど、サラリーマンをしていた頃よりはるかに楽しいですね。いままでに何度か転職してきましたが、一生続けていきたいと思える仕事をようやく見つけられました」。早朝の蕎麦打ち作業の合間に鎌田さんが何気なく発したひと言は店を照らす朝の光のようにすがすがしかった。
食菜 かま田
住所/沖縄県宮古島市平良字下里737-11
電話/0980-72-0296
営業時間/11:30~14:30 L.O、17:30~20:00L.O
定休日/ランチ:火曜日、ディナー:月曜・火曜
Webサイト/https://www.facebook.com/shokusaikamata/
沖縄CLIPフォトライター 福田展也
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